マウスピース矯正は、装置の取り外しができ、またワイヤー矯正よりも負担が少ないことから多くの方から選ばれている矯正方法です。しかしすべての症例に適応できるわけではなく、歯並びや噛み合わせの状態によっては適応が難しいと診断されることがあります。
本記事では、マウスピース矯正ができないと判断される例や適応可能なケース、適応が難しい場合の対応策などを解説します。
マウスピース矯正ができない5つの例
マウスピース矯正に適さない症例について、主な症状や適応が難しい理由を解説します。
まだ生えていない永久歯がある
永久歯が完全に生え揃っていない、または歯が歯茎の下に埋まったままの「埋伏歯(まいふくし)」がある場合は、マウスピース矯正の適応が難しいと考えられます。
特に埋伏歯がある場合、歯茎を切開しワイヤーで引っ張る「埋伏歯開窓術」が必要です。歯を適切な位置に引っ張り出したあとでなければマウスピース矯正が開始できません。
重度の歯周病がある
歯周病が進行すると歯を支える骨が減少し、歯がぐらつくことがあります。この状態で矯正治療をおこなうと、歯がさらに不安定になり、最悪の場合、抜け落ちてしまうリスクがあります。そのため、マウスピース矯正を始める前に歯周病の治療を完了させ、歯ぐきの健康を取り戻すことが必要です。
また進行の度合いによっては矯正治療そのものが難しいこともあります。
歯列不正や不正咬合の原因が骨格にある
歯並びが非常に大きく乱れていたり、あごの骨の形や大きさによる場合、マウスピース矯正だけでは改善が難しい場合があります。特に顎変形症などの骨格的な要因が強い不正咬合には、外科手術と歯列矯正を併用した治療が必要になることがあります。
例えば、歯の移動量が大きいケースや、抜歯が必要なケースでは、ワイヤー矯正の方が適していることもあります。
こうしたケースでは、矯正専門のクリニックで精密検査を受け、適切な治療を受けることが大切です。
インプラントがある
インプラントは、ネジのような人工歯根があごの骨に固定されているため、歯を動かす矯正治療には不向きです。特にインプラントが複数本入っていると、周囲の歯を移動させることが難しくなり、矯正治療自体ができなくなるケースもあります。
自己管理が難しい
マウスピース矯正は、装着時間を守り、適切に管理することが非常に大切な矯正方法です。1日あたり20時間以上の装着が推奨されており、自己管理が難しい場合、治療がうまく進まない可能性があります。
仕事や生活習慣の関係で長時間の装着が難しい方、マウスピースを清潔に保つことが苦手な方、忘れっぽい、あるいはめんどくさがりな方には向いていない場合があります。
マウスピース矯正の特徴と適応症例
マウスピース矯正は、主に軽度〜中程度の歯列不正・不正咬合の改善に向いています。40〜50枚程度のマウスピースを歯並びの状態に合わせて定期的に交換し、少しずつ歯を動かしていくことで歯並びを改善します。
以下に、当クリニックにおけるマウスピース矯正の例をご紹介します。
歯と歯の間に隙間がある
上前歯の真ん中に少し隙間が空いていたり、前歯の数本の間が空いていたりする、いわゆるすきっ歯の治療にはマウスピース矯正が適しています。顎に対して歯が小さい、または歯が少ないことなどが原因で生じます。
上記は比較的隙間が大きい症例でしたが、約1年(13ヵ月)で治療が完了しました。装着時間をしっかりとお守りいただくことでよい結果を得られた例です。
前歯あるいは上顎が前方に突き出している
上顎が前に出ていたり前歯が出ていたりして、口元が突出して見えるケースもマウスピース矯正による改善が可能です。
上記の症例では上下の前歯が出ているだけでなく下の歯が1本引っ込んでいて少しガタつきもありましたが、約1年半(16ヵ月)できれいにおさまって突出感が改善されました。
歯が前後にガタついている
歯並びの程度によりますが、歯が前後にガタついている「叢生(そうせい)」もマウスピース矯正による改善が可能です。
上記の症例では前歯の突出と全体的なガタつきがありましたが、約2年半(29ヵ月)で突出とガタつきの双方とも改善し、きれいに整えることができました。
マウスピース矯正のメリット・デメリット
マウスピース矯正には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
マウスピース矯正の大きな特徴は、矯正装置が取り外し可能なことと、マウスピースが透明であり目立たないことです。これまでと同じように食事ができ、またワイヤー矯正のように矯正装置が目立つこともありません。接客業や営業職など、人と接する機会が多い方にも適した治療方法です。
また、歯を少しずつ動かすためワイヤー矯正と比べて痛みが少ない傾向にあること、金属を用いないため金属アレルギーの方でも矯正治療ができることもメリットとして挙げられます。
デメリット
前述でもご紹介したとおり、マウスピース矯正は1日あたり20時間以上の装着が推奨されています。食後や歯磨き後に装着し忘れて装着時間が短くなると、計画通りに歯が動かない可能性があります。ワイヤー矯正と比較すると自己管理が苦手な方には不向きといえるでしょう。
また、軽度から中等度の歯列不正・不正咬合には対応できますが、重度の不正咬合や顎の骨格に問題がある場合は、ワイヤー矯正や外科手術を併用しなければならないケースがあります。
自己管理が求められること、適応症例に制限があることがデメリットといえます。
マウスピース矯正ができない場合の対応策
マウスピース矯正が適応できないと診断された場合の対応策として、以下の方法が挙げられます。
ほかのクリニックにも相談してみる
マウスピース型の矯正装置にはさまざまな種類があり、クリニックによって取り扱っている装置が異なります。そのため、最初に相談したクリニックでは適用不可と判断された場合でも、別のクリニックでは対応可能なケースがあります。
診察時に使用する矯正装置の種類を確認しておくことで、ほかの医院での相談がスムーズになります。複数のクリニックを比較してみることも、自分に合った治療法を見つける一つの手段です。
ワイヤー矯正とのハイブリッドを検討する
マウスピース矯正が完全に適応できない場合でも、一部の期間だけワイヤー矯正を併用する「ハイブリッド矯正」という方法があります。マウスピースが適応できるレベルになるまではワイヤー矯正で歯を動かし、その後マウスピース矯正に切り替える方法です。
なるべく目立たないかたちで矯正治療を受けたいが、マウスピース矯正が適応とならないケースに適した選択肢といえるでしょう。
ワイヤーが目立つのが嫌な方は裏側矯正を検討する
人前に出る機会が多い職業に就いているなど、一時的にワイヤー矯正を受けることにも抵抗がある方に「裏側矯正」という方法があります。
矯正装置を歯の裏側に装着して、歯を動かしていく方法で、技術的に難しく治療費が高くなる傾向にありますが、外見上ほとんど気付かれないため、矯正中でも目立ちにくい治療を希望する方に適しています。
セラミック矯正を受ける
インプラントの土台があるために適応とならない、といった場合にはセラミック矯正による治療が可能な場合があります。セラミック矯正では、もともとの歯を削ってその上から被せ物の歯を装着して見た目を整えます。
短期間で歯並びを整えたい場合にも有効です。
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自分に合った矯正方法を選ぶために注意すべき点やポイント
歯列矯正を受けるうえで注意したいのは、矯正方法の選び方です。特に、好みだけで選択した場合、理想通りの歯並びにならないリスクがあります。医師から症例や治療計画の説明を受けて自分に合った矯正方法を選ぶようにしましょう。
適切な治療方法を選ぶには下記のポイントを押さえることが重要です。
矯正のリスクを把握しておく
歯列矯正には見た目や健康上のメリットがありますが、リスクもともないます。例えばマウスピース矯正では、唾液が歯に行き渡りにくくなるため虫歯になるリスクが増加します。装着時間を守らなかった場合に治療期間が長引いたり、それにともない費用が増加することもリスクの一つです。
またワイヤー矯正は、唇の裏側に装置が当たることで口内炎が起こりやすくなること、金属アレルギーを発症する可能性があることがリスクとして挙げられます。
上記のようなリスクについて、事前に理解しておくことが重要です。
症例や実績は豊富かどうか確認しておく
矯正治療は歯科医師の経験や技術によって仕上がりが左右されるため、過去の症例や実績の確認が重要です。特に、自分と似た症例の治療経験があるかどうかを調べることで、より適した治療を受けられる可能性が高まります。
また、公式サイトや口コミで実際の治療結果を確認するのもひとつの方法です。矯正治療は長期間にわたるため、信頼できる歯科医師を選ぶことが大切です。
なお当クリニックのマウスピース矯正の治療実績は累計で16,506件(※)です。実績を重ねるたびに、着実に経験と知識を積んでいますので、マウスピース矯正を検討している方は、ぜひ湘南美容歯科にご相談ください。
湘南美容歯科のマウスピース矯正についてはこちら >
※2019年~2024年12月累計マウスピース矯正症例数
コミュニケーションが取りやすいかどうか
矯正治療は長期間に及ぶため、歯科医師とのコミュニケーションのしやすさも重要なポイントです。治療方針や進行状況について丁寧に説明してくれるか、質問に対して明確に回答してくれるかを確認するとよいでしょう。
特に初回相談の感触は治療がスムーズに進みそうか判断する材料となります。まずは自分の希望や悩み、疑問に思っていることを伝えてみて、検討を進めていきましょう。
自分のライフスタイルに合っているか
ライフスタイルとの相性も矯正方法を選ぶ際の目安となります。
例えば、食事の自由度を重視するならマウスピース矯正が向いている一方で、装着時間を厳守できない場合はワイヤー矯正のほうが適している場合もあります。
また人前に出る機会が多い職業の方はワイヤーが目立ちにくい裏側矯正や透明なマウスピース矯正を選ぶことも考えられます。
費用は想定の範囲内かどうか
矯正治療の費用は、矯正の種類、治療範囲、治療期間によって異なります。治療計画と費用総額を確認し、自分の予算内に収まるかどうかを事前に確認することも重要です。また、分割払いの可否や医療費控除の対象になるかも確認しておくと、経済的な負担を調整しやすくなります。
場合によっては治療期間が長引く可能性もあるため、長引いた場合の費用も尋ねてみるとより安心です。
まとめ
装置の取り外しができることが魅力のマウスピース矯正ですが、重度の歯周病や不正咬合がある場合や、骨格に原因がある場合などは適応が難しいこともあります。
マウスピース矯正の特徴を把握し、自分の歯に適応している治療方法なのか、自身のライフスタイルにあっているのか、医師に相談をしながら検討しましょう。
すぐに取り組める対応策は、相談したクリニックが取り扱うマウスピースの種類をメモしておくことです。いくつかのクリニックに相談をして、信頼できるところに依頼をするようにしましょう。
※本記事の内容は公開時点の情報であり、実際のメニュー名や金額とは異なる場合がございます。
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