歯並びを改善する歯科矯正のなかでも、目立たず気軽に挑戦しやすいマウスピース。
歯科で取り扱っているマウスピースには世界中で使用されている「インビザライン」をはじめ、いくつか種類があります。
では、インビザラインと他のマウスピースではどのような違いがあるのでしょうか。
それぞれの特徴を解説していきます。
マウスピース矯正とは?
審美歯科のマウスピースは、歯に圧力をかけて少しずつ歯並びを改善することを目的とした、薄くて透明に近いマウスピースです。
従来のワイヤーを使ったブラケット矯正は見た目が悪いため敬遠する方も多くいましたが、目立たないうえに取り外しも自分でできる利便性から、マウスピース矯正を選択する方が増えてきました。
矯正に使用するマウスピースは国内外のメーカーによって種類があり、治療方法や対応範囲も多少異なります。
これらのうち、世界的に最も有名なマウスピースを使った矯正方法が「インビザライン」ではないでしょうか。
では、インビザラインとそれ以外のマウスピースについて詳しく見ていきましょう。
インビザライン
インビザラインは、1999年にアメリカのアライン・テクノロジー社が提供開始した世界シェアNo.1を誇るマウスピースシステムです。
2022年2月時点で、世界100か国以上・1,200万人以上の方がインビザラインによる歯科矯正をおこなっています。
今ではマウスピース矯正の代名詞にもなっており、日本でも多くの方が使用しています。
インビザラインの特徴
インビザラインとは、多くの臨床データをもとに最新のデジタル技術を駆使したカスタムメイドの歯科矯正装置です。
コンピューターのシミュレーションによって歯牙移動の最適な進め方と段階ごとの装置の形状を決定し、一人ひとりに合わせたマウスピースを作ります。
見た目は透明に近く、卵パック程度の薄さしかないため、歯に装着しても目立ちません。
インビザラインの治療方法
まず、治療のはじめに1度だけ歯型を取り、コンピューターで3次元画像にして歯の動きをシミュレートし、目標の歯並びまでの治療計画を立てます。
次に、治療計画を踏まえてアメリカで20個以上のマウスピースを作ります。
お客さまは、これを医師の指示どおりに順番に装着して少しずつ目標の歯並びに近づけていきます。
マウスピースの交換は自分でおこない、1〜2ヵ月ごとに通院して経過観察を続けていきます。
インビザライン以外のマウスピース矯正とは
インビザライン以外の代表的なマウスピースには、日本製の「アソアライナー」や「キレイライン」などが挙げられます。
これらのマウスピースの多くは日本国内で生産しているため、安定供給と早期の治療開始が可能ですが、同時に歯科技工士の技術の高さが必要になります。
では、日本製のマウスピースを例に挙げてインビザラインと比べてみましょう。
日本製のマウスピース矯正とは
インビザラインと同様にいずれも透明に近く、装着時に目立ちません。
しかし、インビザラインと異なり対応範囲が狭く、前歯のみ・見える部分のみなど少し歯並びをよくしたい場合に使用されることが多いようです。
基本的に「ソフト」「ハード」といった硬さの違うマウスピースを交換して歯並びを改善していきます。
日本製のマウスピース矯正の治療方法
まず歯型を取り、今の状態から少し歯が移動した状態を目標にして、硬さの違うマウスピースを国内製造所で作ります。
次に、このマウスピースを医師の指示に従って順番に装着していきます。
通院は2週間〜1ヵ月ごとで、その都度歯型を取って次のマウスピースを作製します。
この作業を何度も繰り返し目標に近づけていきます。
インビザラインと日本製のマウスピース矯正の違い
船の航行で例えるなら、インビザラインはコンピューター制御によって目的の島までの航路が最初から見えている船、他のマウスピース矯正は方位磁石や地図を使って目的の島まで少しずつ近づいていく船といえるでしょう。
では、それぞれどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
インビザラインのメリットとデメリット
歯型採取が最初の1回で済む点は、歯型取りが苦手な方にとって大きなメリットです。
特殊な光学スキャナによって歯形を3D化してシミュレートし、治療開始から完了までのマウスピースを一括で作ります。
そのため治療完了後のイメージを持ちやすく、通院も基本的に経過観察のみで回数が少なく済むため、忙しい方や遠方の方にも人気があります。
また、インビザラインは奥歯や複雑な配置の歯にも対応できるため、対応範囲が広い点もメリットです。
前歯だけ少し見栄えをよくしたい方から、全体的にしっかり噛み合わせを改善したい方まで幅広く対応できます。
デメリットとしては、アメリカでマウスピースを作製するため歯型採取から治療開始までやや時間がかかる点でしょう。
また、費用は最初の段階で総額がわかるものの、基本的に他のマウスピース矯正よりも高額です。
日本製のマウスピース矯正のメリット・デメリット
国内の製造所でマウスピースを作るため、歯型採取から治療開始までの時間があまりかからない点はメリットといえるでしょう。
また、通院のたびに歯の状態を見てマウスピースを作るので、途中で虫歯治療などに対応することも可能です。
そのため、インビザラインと比べて費用が基本的に安く抑えられます。(治療が長引いたり、追加でマウスピースを作製したりすると高額になることもあります。)
しかし、通院回数が多くその都度歯型を取らなくてはならないので、忙しい方や歯科医院が苦手な方にとって負担が大きくなってしまうデメリットがあります。
さらに、適応範囲が狭く、全体的に歯並びを改善したいという方にはあまり向かないかもしれません。
様子を見ながら治療を進めていくので、全体でどれくらいの期間・費用が必要になるのかわかりにくい点もデメリットといえるでしょう。
インビザラインGoとインビザラインフルの違い
インビザラインのシステムには、さらに「Go」と「フル」という種類があります。
インビザラインGo
「Go」は軽度の症例や部分矯正に対応しています。
主に前歯部の歯並びが対象で、口を開けたときにきれいな口元に見えるように改善したい場合などに適用します。
また、矯正治療をおこなったあとに再び歯並びが戻ってしまう「後戻り」の対応なども可能です。
インビザラインフル
「フル」は歯列全体に対応します。
歯並びが全体的に悪い方や重度の乱杭歯の方など、全体的に歯列矯正をおこなったほうがよい方を対象に、きれいな歯並びを目指していきます。
場合によっては、抜歯など別の治療と併用することもあります。
マウスピース矯正で失敗しないために
従来よりも気軽に挑戦できることから人気が高まっているマウスピース矯正ですが、思っていた仕上がりにならない症例も少なからず存在します。
「こんなはずじゃなかった」という後悔をしないために、どんな点に気を付ければよいのでしょうか。
装着時間・交換時期を守る
マウスピース矯正は従来のブラケット矯正と異なり、食事の際などに自分で着脱ができる点が大きな特徴です。
しかし、決められた装着時間や交換時期を守る自己管理が重要となります。
長時間外しっぱなしにしていると充分な治療効果を得られず、次のマウスピースが装着できなくなるなどの支障が出ることもしばしば見受けられます。
指示どおりに決められた装着時間を守らないと、治療計画にズレが生じ、結果として費用や期間がかさむ可能性が高くなります。
口腔ケアで虫歯や歯周病を予防する
矯正治療中に虫歯や歯周病になると、その治療が優先となるため矯正治療を一時中断せざるを得なくなります。
さらに、虫歯治療によって歯の形が変わるとマウスピースが合わなくなり作り直す必要も出てくるため、矯正中は特にしっかりと口腔ケアをおこないましょう。
マウスピースは取り外しができるというメリットがあるので、歯磨きやデンタルフロスも普段と同じようにおこなえます。
歯磨きのときは、歯だけでなくマウスピース自体の洗浄もしっかりとおこなうようにしましょう。
症例数が多く経験が豊富な歯科を選ぶ
マウスピース矯正は担当する歯科医師によっても治療計画や治療方針が異なってきます。
経験が浅い歯科医師だと、無理な計画を立てて失敗してしまうこともあります。
また、途中で虫歯ができてしまうなど、事前のシミュレーションどおりに計画が進まない場合もあります。
納得のいく治療内容と希望の仕上がりにするためには、経験豊富で問題に臨機応変に対応できる歯科医師を選ぶとよいでしょう。
まとめ
マウスピース矯正の種類は、アメリカ発の「インビザライン」や日本製の「アソアライナー」、「キレイライン」などが代表的です。
インビザラインは一括でマウスピースを作製することから、歯型取りが1度で済む・通院の回数が少ない・治療後の歯並びをイメージしやすいなどのメリットがあります。
他のマウスピース矯正は、通院の度に歯型を取らなくてはなりませんが、途中で軌道修正が可能・国内生産のため迅速にマウスピースが届くなどのメリットがあります。
ただ、対応範囲はインビザラインよりも狭いです。
どのマウスピース矯正であっても、必ず決められた装着時間と交換時期を守り、口腔ケアをしっかりおこないましょう。
そして、しっかりと治療計画を立ててくれる経験豊富な歯科を選ぶことが大切です。
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