歯列矯正は多くの場合、自由診療となり全額自己負担となっていますが、特定の条件を満たせば保険適用となるケースもあります。

本記事では、顎変形症や永久歯萌出不全など、健康保険が適用される矯正治療の条件、また歯列矯正にかかる費用の目安や費用負担を減らす方法について解説します。

歯列矯正は保険適用になる?

歯列矯正は基本的に健康保険の適用外であり、自由診療扱いとなります。歯並びを整えることは健康上のメリットもあるものの、多くの場合は審美目的で実施されることが多いとされるためです。

ただし、先天性異常や特定の疾患により歯列不正や不正咬合が生じる場合に、保険適用が認められるケースも存在します。保険適用となる医療行為は「疾病や障害を治療すること」が目的のため、治療の一環として歯列矯正が必要となる場合に、医療保険が適用されることがあります。

また歯列矯正の保険診療ができるのは、「厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみ(日本矯正歯科学会より引用)」となっています。

歯列矯正が保険適用になるケース

歯列矯正を保険適用で受けるには、特定の条件に該当し、歯列矯正が治療目的で実施されると認められる必要があります。下記3つのケースが該当します。

先天性の疾患により歯並びに問題が生じている

先天性疾患が原因で不正咬合が生じた場合、歯列矯正が保険適用となるケースがあります。

例えば、「唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)」や「ダウン症候群」は、上顎の発達不全によって患者に歯列不正や不正咬合が生じる可能性があり、治療の一環に歯列矯正をともなう場合には医療保険の対象となります。

その他、厚生労働大臣が定めた対象となる疾患は66種です(令和6年1月時点)。日本矯正歯科学会の公式Webサイトや、厚生労働省が定めるリストに明記されていますので、該当する疾患がある場合は、適用可能か否かを医療機関に相談することをおすすめします。

顎変形症により噛み合わせがズレている

顎変形症とは、上下の顎の位置や形状に異常があり、不正咬合を引き起こす疾患です。歯列矯正だけでなく外科手術をともなうケースがあり、条件を満たすことで手術前後の歯列矯正に保険が適用されます。

「顎口腔機能診断施設」として指定された医療機関で、顎変形症の診断を受けること、また歯列矯正に加えて、顎の骨を切るなどの外科手術を要することが条件となります。

前歯および小臼歯の永久歯が3本以上生えてこない

永久歯が適切な時期に生え揃っていないことを「永久歯萌出不全(えいきゅうしほうしゅつふぜん)」といいます。

永久歯が歯茎のなかで作られていないケース、歯の生えるスペースが足りないなど何らかの要因で「埋伏歯(まいふくし)(歯茎に埋まったままになる)」となるケースとがあります。

埋伏歯であれば、歯茎を切開して歯を引っ張り出す「埋伏歯開窓術」の実施によって生えてくるようになります。保険適用になるのは、前歯および小臼歯が3本以上生え揃っておらず歯列不正や不正咬合が生じるおそれがある状態で、かつ「埋伏歯開窓術」が必要となるケースです。

保険が適用されるまでの流れ

歯列矯正に健康保険が適用されるまでの流れは、以下のとおりです。

  • 歯科医師による診断
  • 保険適用の必要性を記載した診断書の発行
  • 保険機関による診断書の審査
  • 審査通過後に治療が開始

まずは医師による診断を受け、保険適用の必要性があると判断されたら診断書が発行されます。診断書には、歯列不正や不正咬合などの症状とその原因となる疾患、また治療方針や保険の必要性などが記載されます。

その内容が保険機関に審査されて妥当性が認められると、保険診療での歯列矯正が可能になります。治療の開始は審査後になるため、医師に診断から治療開始までには数週間、場合によっては数ヵ月を要することもあります。

医療機関の探し方

歯列矯正に保険適用が可能な医療機関は地方厚生局への届け出がされている機関に限定されているため、該当する医療機関を探す必要があります。以下の手順で探すことができます。

手順①:地方厚生局のホームページにアクセス

まずは地方厚生局のホームページにアクセスします。地方厚生局は北海道、東北、関東信越、四国や九州など8つの厚生(支)局があるため、まずはお住まいの地域にある地方厚生局のホームページにアクセスしましょう。

厚生労働省の下記の「地方厚生(支)局」ページに一覧がまとめられています。

手順②:「届出受理医療機関名簿」の歯科のPDFを開く

地方厚生局ホームページを開いたら画面右上にあるサイト内検索の欄に「施設基準届出受理医療機関名簿」と入力します。

「施設基準等の届出事項(届出受理医療機関名簿)」と書かれたリンクをクリックすると、PDFをダウンロードできる画面が表示されます。

表内の「保険医療機関(歯科)」と書かれた行にPDFをダウンロードするリンクがあるため、そちらをダウンロードして表示します。

手順③:「矯診」または「顎診」の医療機関を探す

PDFを開くと「届出受理医療機関名簿」と書かれたドキュメントが表示されます。一覧表の「受理番号」の列に「矯診」または「顎診」と書かれているところが、矯正歯科に保険適用のできる医療機関です。

「矯診」は先天性疾患や永久歯萌出不全の治療に対応した施設、「顎診」は顎変形症の治療に対応した施設です。

歯列矯正の費用目安や保険が適用された場合の費用について

歯列矯正の費用は、マウスピース矯正やワイヤー矯正など、矯正する範囲や手法、また治療期間によって変動します。

マウスピース矯正では、部分矯正と全体矯正があり、10〜100万円ほどと幅があります。また、ワイヤー矯正(表側矯正)の場合、費用相場は70〜100万円ほどで、ワイヤーの裏側矯正のように技術的に難しい手法で治療期間が長期ににわたるケースでは150万円以上かかることもあります。

正確な費用は診断やシミュレーションを経て治療計画を立てることで算出可能になります。矯正中だけでなく、定期的な通院や矯正後の保定期間にもお金がかかります。

保険が適用された場合は、3割負担になるため、歯列矯正費用を100万円とした場合、負担額は30万円になります。

ただし、上記は歯列矯正にかかる費用であり、歯列矯正が保険適用となる場合は外科手術などの手術をともなうケースもあるため、治療費全体の価格ではありません。あくまでも歯列矯正にかかる費用であり、入院・通院代金や手術費用が別途かかります。

歯列矯正の費用については、以下をご覧ください。
歯列矯正の費用は?種類別の相場や料金体系について解説

歯列矯正の費用負担を軽減する方法はある?

歯列矯正は、疾患などの治療の一環として歯列矯正が行われる場合を除き自由診療となるのが原則です。全額自己負担となりますが、負担を軽減する方法もあります。

デンタルローンの利用

ひとつは「デンタルローン」の利用です。歯列矯正にかかる費用を金融機関に立て替えてもらい、分割返済していく仕組みです。クレジットカード払いよりも金利が低くなるため、月々の費用負担を抑えることが可能です。

また、医療機関が独自の分割払いを用意しているケースもあります。

医療費控除で税負担を減らす

もうひとつは医療費控除を利用して税負担を少なくする方法です。医療費控除とは、年間の医療費が一定以上の金額になった場合に超過分を所得から控除できる制度です。

収めるべき税金の額が少なくなるため、間接的ではありますが生活費の負担を減らすことが可能です。

矯正歯科の医療費控除については、以下をご覧ください。
歯列矯正は医療費控除の対象になる?控除される条件や申請方法を解説

まとめ

歯列矯正は、自由診療となるのが原則です。保険適用となるのは、審美目的ではなく、疾患の治療を目的とした場合のみです。

また、歯列矯正は治療範囲・治療方法・治療期間によって費用が異なります。
費用の目安は、ワイヤー矯正が「70〜100万円ほど」、マウスピース矯正が「10〜100万円ほど」となります。

治療費そのものを安くすることは難しいですが、デンタルローンや医療費控除の活用によって生活費の負担を減らすことは可能です。

湘南美容歯科では分割が可能な「メディカルローン」をご用意しております。
また、マウスピース矯正とセラミック矯正を取り扱っており、特別な症例を除いて自由診療ですが、部分的な歯列矯正であれば、費用を抑えた施術が可能です。

歯列矯正についてご不明な点がある方、歯列矯正を検討している方は、ぜひ湘南美容歯科にご相談ください。
湘南美容歯科の歯列矯正についてはこちら >

※本記事の内容は公開時点の情報であり、実際のメニュー名や金額とは異なる場合がございます。最新の情報については当院までお問い合わせください。