2024年にある医療法人が実施した調査によると、小学生以下の子どもを持つ親のうち、「小児矯正を前向きに検討したい」と回答した割合は40%近くにのぼりました。しかし、実際に矯正治療を終えたあと、一定数が「子供の歯科矯正をやらなきゃよかった」と後悔しています。
この記事では、小児矯正で失敗しないために、後悔した理由や小児矯正の重要性、治療のメリットと注意点などをご紹介します。子供の歯科矯正でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
参考:医療法人社団康樹会 海岸歯科室「「子どもの歯並び」に関する調査」
子供の歯科矯正をやらなきゃよかったと後悔した原因
子供が歯科矯正をした親は、どのような理由で治療を後悔するのでしょうか?後悔した原因について一つ一つみていきましょう。
矯正したあとに歯が元の状態に戻った
歯科矯正で動かした歯が元の状態に戻ることを「後戻り」といいます。せっかく矯正をしたのに、元に戻ってしまい、後悔をしたと感じてしまう方がいます。
しかし、後戻りが起きる原因は保定期間中に正しく保定装置(リテーナー)が使用できていないといった場合があります。大人と比較して、成長期の子供は歯が動きやすいため、動かした歯を固定させる保定装置(リテーナー)を正しく使用する必要があります。
必要としない抜歯をされた
抜歯は本来、歯の動くスペースをつくる目的でおこなわれますが、適切な理由なく抜歯されてしまうケースがあります。不必要な抜歯を防ぐために、医師から抜歯を勧められた際は、明確な理由があるか必ず確認をしましょう。
ただし、ときには必要な抜歯もあります。変化が感じられないなどの不安や不満を抱えないために、子供や医師としっかりと話し合うことが大切です。
治療期間が長く変化がないと感じた
歯は少しずつしか動かせないため、歯科矯正には時間がかかります。ただ、治療を長年続けているのに初期と状態が変わらないのであれば、治療内容が適切でないと考えられます。この場合、別の歯科医院に相談するセカンドオピニオンが推奨されます。
経済的負担が大きかった
小児矯正の治療費は保険がきかないため全額自己負担となっています。また、長期的な治療を要する場合もあります。
そのため、経済的負担の重さが後悔の原因となるケースも多いです。
歯並びや見た目に影響が出た
小児矯正では、骨の幅の範囲内で歯を動かし、歯列を頬側に拡大させるため「拡大床(かくだいしょう)」といった装置が用いられます。時折、顎の骨を広げる目的で使用しようと進める場合がありますが、拡大床の目的はあくまでも「歯列をきれいに並べるためにスペースを作り出すこと」です。
拡大床の用途が間違っていると、歯並びの悪化や出っ歯など、見た目に影響が出てしまいます。カウンセリングや診察時には、医師の話を注意して聞くようにしましょう。
小児矯正の重要性や必要となる症例とは?
ここからは、小児矯正はなぜ重要なのか、どのような症例で必要となるのかご紹介します。
小児矯正の重要性
治療期間の長さや費用の負担などから「子供の歯科矯正は意味がない」と考える人も少なくありません。しかし、歯並びや噛み合わせの早期治療などの観点から、子供のうちから歯科矯正をすることには、さまざまなメリットがあり、実際には重要性の高い治療となります。
矯正が必要となる症例
小児矯正を要する一般的な症例は主に4つあります。
受け口(反対咬合)
本来なら上の歯が覆いかぶさるような噛み合わせになるところ、下顎が前に出ている状態を指します。
顎自体が前に出ている「しゃくれ」とは異なりますが、受け口と併発している場合もあります。
受け口について詳しく知りたい方は、以下でご確認ください。
受け口(反対咬合・下顎前突)の矯正
交叉咬合
上の歯が下の歯に被さるのが正しい歯並びであるところ、歯並びの途中で交叉し、上の奥歯が下の奥歯の内に入った状態です。
放置すると、顎がずれて成長して、顔が歪んだり、顎関節症を起こしやすくなったりします。
出っ歯(上顎前突)
奥歯で咬んだ際、上の前歯が前方に出ている状態です。遺伝による先天的原因と、指しゃぶりや爪を噛む癖による後天的原因があります。
出っ歯だと口が開いたままになりやすく、頻繁に口が乾いたり、口元の突出感の原因にもなるため、見た目に自信が持てなかったりするといった影響が考えられます。
出っ歯の原因や治療方法は、以下で解説しています。
出っ歯(上顎前突)の矯正
開咬(オープンバイト)
奥歯は咬み合っていますが、上下の前歯が咬み合わずに隙間ができ、食べ物が咬み切れない状態を指します。
骨格や歯列が原因である場合や、指しゃぶりや頬杖などの日頃のクセが原因となる場合があります。
子供の歯科矯正をするメリット
子供のうちから歯科矯正をするメリットにはどういったものがあるのでしょうか。主なメリットの4つをご紹介します。
歯並びを早期に治療できる・骨格のバランスを整えられる
「歯科矯正は大人になってからでよい」と思っている方も少なくありません。しかし、大人と比べて、成長期の子供のほうが歯が動きやすいため、早期に治療すれば、将来的な歯科矯正の負担を軽くできます。
また、歯並びや噛み合わせが悪いままにしてしまうと、顎の骨が変形してしまう可能性があります。小児矯正をおこない、歯を正しい位置に移動させることで、顎の骨の正しい成長を促して、骨格のバランスを整えることができます。
正しい噛み合わせを確保できる
子供の健やかな成長を考えると、歯の果たす機能は侮れません。正しい噛み合わせは、子供の噛む機能や咀嚼、発音、脳の発達に影響を与えるため、身体全体の発育を促進する観点からも重要です。
虫歯や歯周病のリスクが軽減できる
歯並びが悪く、歯に凸凹がある状態だと、歯と歯の間に食べカスが詰まりやすくなったり、磨き残しが発生しやすくなり、虫歯や歯周病の危険があります。
小児矯正をおこなうことで、歯の並びが整い凸凹がなくなり、歯磨きがしやすくなるため、結果として虫歯や歯周病の予防につながります。
歯並びに自信が持てる
ある歯並びに関する意識調査では、約45%の方が「歯並びに自信がない」と回答しており、歯並びをコンプレックスに感じている方が多くいることがわかります。
参考:日本臨床矯正歯科医会「全国のOL300名を対象に歯並びに関する意識調査を実施」
早いうちから歯科矯正を受けることで、コンプレックスの解消にもつながり、歯並びに自信を持てるようになるでしょう。
子供の歯科矯正の注意点や見るべきポイント
小児矯正を受ける際は、これからご紹介する6つのポイントに注意してください。
早いうちから定期検診にいっておく
子供の口腔状況を適切に判断したり、矯正治療のタイミングを見極めたりするうえで、早いうちから定期検診を受けておくことが重要です。
子供は生後半年頃から下の前歯が生えてくるため、この時期から定期検診をに行くことをおすすめします。
デメリットやリスクを理解しておく
小児矯正にはデメリットやリスクもあります。
治療期間が予定していたよりも長くなってしまったり、矯正の種類によっては一時的に見た目が悪くなってしまう可能性があります。
また、矯正器具によって口内炎ができやすくなったり、矯正器具によって歯磨きしにくいことで歯周病になったりするリスクもあります。
小児矯正の際には、こういったデメリットも理解しておき、それぞれ対策できることはないか考えておくことが大事です。
二期治療や抜歯となる場合もあることを知っておく
子供の歯科矯正は、成長期に顎の骨の形を整える「Ⅰ期治療」と、永久歯が生え揃ってから歯を動かして歯並びを整える「Ⅱ期治療」で構成されます。
一期治療をおこなえば、基本的に正しい場所に歯が動きますが、二期治療や抜歯を要する場合もあります。担当医から提案を受けた際はしっかり説明を聞き、不安や疑問を解消してから治療を進めることが重要です。
保護者が子供をサポートする
小児矯正は長期にわたるため、子供が治療を嫌がってしまう可能性があります。そのため、保護者のサポートが欠かせません。
具体的には、器具の装着時間の管理、歯磨きや食事の管理、モチベーション維持が必要になります。また、子供が矯正で痛みや不便を感じていれば、改善策を医師と相談しましょう。
保定期間も医師の指示に従う
矯正期間が終わったあと、整えた歯並びを固定する保定期間があります。後悔した原因でもあげたように、この保定期間中に保定装置(リテーナー)を正しく使用できないと「後戻り」が発生する可能性があります。
矯正器具を正しく使用し、引き続き医師の指示に従うようにしましょう。
歯並びを悪化させる癖に注意する
食いしばりや猫背、頬杖、口呼吸など、普段の癖が歯並びを悪化させる原因となる可能性があります。
子供は歯並びが変わりやすいため、こうした癖は早期に改善しておく必要があるでしょう。ただし、なかなか癖が治らなくて悩んだときは、まず医師に相談をしてみてください。
子供の歯科矯正に関してよくある質問
最後に、子供の歯科矯正の費用、治療期間、治療開始時期に関する質問をまとめました。
費用はどれくらいかかる?
地域やクリニック、治療の内容によっても異なりますが、カウンセリングや検査費用、治療期間、保定期間など、合わせて20〜50万円程度かかります。
また、「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」によっても治療内容や費用が異なってきます。どちらの治療も数十万はかかるとみておきましょう。
なかには100万円を超える治療もあるため、長期的な目線で医師や家族ときちんと相談して決めることが大事です。費用負担を考えた際には、医療費控除の利用を考えてみましょう。
矯正歯科の医療費控除に関して詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
歯列矯正は医療費控除の対象になる?控除される条件や申請方法を解説
治療期間はどれくらい?
治療を開始する時期や歯の成長速度に左右されますが、治療期間は「Ⅰ期治療」で1〜3年程度、「Ⅱ期治療」1〜2年程度とされています。
また、治療後の保定期間も2年半〜3年ほどかかるとされているため、小児矯正を検討する際は、治療期間だけではなく保定期間も合わせて考えておくとよいでしょう。
子供の歯科矯正はいつから始める?
小児矯正を始める最適な時期は、子供の成長や歯の状態によって違いがあるものの、一般的には永久歯が生え始める6〜7歳頃とされています。ただし、定期検診で受け口や出っ歯を指摘された場合は、治療を検討してください。
まとめ
小児矯正をやらなきゃよかったと後悔しないためにも、まずは矯正のデメリットや注意点を理解しておきましょう。
健康的な歯並びは、子供の成長や自信に左右します。早期から歯並びの治療をすることで、将来的な歯科矯正の負担を軽くできたり、骨格のバランスを整えることが期待できるなど、さまざまなメリットがあります。
小児矯正の重要性やメリット・デメリットなどを理解したうえで、子供も親も後悔しないよう治療を進めてください。
湘南美容歯科では、実績のある医師が丁寧なカウンセリングを実施したうえで治療をおこなっています。
歯列矯正を検討している方は、ぜひ湘南美容歯科にご相談ください。
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