最近では大人の歯列矯正も一般的になってきました。大人になってから歯並びが気になり始めた方も少なくないでしょう。しかし一方で「大人の歯列矯正はやめたほうがいい」という意見も耳にします。
本記事では、歯列矯正の大人ならではのリスクや失敗例、メリットについて詳しく解説し、失敗を防ぐためのポイントをご紹介します。
大人の歯列矯正はやめたほうがいいと言われるのはなぜ？
「歯列矯正は大人になってからでは遅い」「やめたほうがいい」といった意見を耳にすることがありますが、これは必ずしも正しいわけではありません。
歯列矯正は、年齢に関係なく始めることができ、十分に効果が期待できる治療です。実際に、子どもに限らずさまざまな年代の方が歯列矯正を受けています。
しかし、大人の歯列矯正がこのように言われる理由は、大人特有の口腔内のトラブルや代謝の遅れなどが、治療に影響する可能性があるからです。ここでは大人の歯列矯正ならではのリスクを紹介します。
歯根吸収・歯肉退縮の可能性がある
大人の歯列矯正の場合、歯根吸収（しこんきゅうしゅう）や歯肉退縮（しにくたいしょく）になる可能性があります。
歯根吸収とは、矯正器具による歯への負荷が原因で、歯根部分が溶けたり短くなったりする症状のことです。重度の歯根吸収になると、歯がグラグラしたり、歯抜けしたりする場合もあります。加齢によって骨の代謝が遅くなるため、大人は特に歯根吸収が生じやすいとされています。
一方、歯肉退縮とは、歯茎が後退して歯根が露出してしまう症状を指します。特に、歯周病などで歯茎が弱っている場合に起こりやすいとされています。歯肉退縮が進行すると、歯の間に歯垢が溜まりやすくなり、知覚過敏を引き起こす原因にもなります。
虫歯や歯周病が悪化する可能性がある
矯正中は、矯正器具を長時間装着する必要があり、食べかすや汚れが溜まりやすい状態になります。そのため、歯磨きやケアを怠ると虫歯や歯周病になったり、悪化してしまう可能性があります。
大人の場合、歯周病や虫歯、歯槽膿漏などが生じやすく、症状が重度の場合は歯列矯正自体が困難になることもあります。
子どもよりも大人は口腔内トラブルを抱えやすいため、矯正中はもちろん、矯正後も毎日の口腔ケアを徹底する必要があります。
抜歯が必要になる可能性がある
大人の歯列矯正の場合、歯を動かすスペースを確保するために抜歯をする可能性があります。
まだ成長過程の子どもであれば、顎を広げやすく歯も動きやすいため、抜歯をせずに矯正できるケースが多いといえます。
しかし、成長が止まった大人の場合、顎の大きさを広げることはできないため、歯を抜くことでスペースを確保する必要があります。軽度な症状であれば問題ありませんが、八重歯やガタガタの歯並びの場合は、抜歯が必要になる可能性があります。
歯列矯正で生じるリスクや後悔した理由
前述のとおり、大人ならでは歯列矯正のリスクがある一方で、年齢問わずに生じるリスクもいくつか存在します。歯列矯正で後悔しないように、事前に把握しておきましょう。
想像していたよりも痛みが強かった
歯列矯正は、矯正器具で歯に力を加えることで少しずつ歯を動かします。痛みの感じ方は個人差がありますが、矯正器具を付けることで、強い痛みを感じる方もいます。
特に大きく歯を動かす必要がある重度の叢生（そうせい：ガタガタの歯）の場合は、痛みを感じやすいでしょう。
歯茎の高さが変わってしまった
歯列矯正によって歯を動かしていくなかで、歯肉が引き伸ばされると、歯茎の高さが変わってしまうことがあります。
歯茎の高さが変わると、歯と歯の間に隙間が生じたり、歯が長くなって見えたりしてしまいます。特に歯周病を患っている方に生じやすいため、矯正中は、徹底した歯のメンテナンスが必要です。
顔の印象が変わってしまった
歯列矯正中の抜歯や噛み合わせが変わることで、まれにほうれい線が目立つようになったり、顔が面長に見えたりすることがあります。前に突出していた歯が後ろに下がることで、口周りの皮膚が余り、たるんだように見えるのが原因です。
ただし個人差があるため、誰しもにこのような変化が現れるわけではありません。むしろ歯並びが整うことで、横顔の印象が改善したり、輪郭がスッキリしたりといった変化も期待できます。
治療期間が長くかかってしまった
歯列矯正の治療期間は、矯正の種類や歯の状態によりますが、約2〜3年と長期におよびます。歯の動き具合や、矯正装置の装着時間不足などによっては、当初の治療計画よりも期間が延びてしまうケースもあります。
歯列矯正を始める前に、長期に及ぶ治療による日常生活の影響を十分に考えておく必要があるでしょう。
費用が想定よりも高額になってしまった
歯列矯正は審美目的である場合が多く、保険適用とならず自費で受けることになります。また、治療期間が延びたり、矯正装置の数が増えたりすることで、当初考えていた費用よりも高額になる場合もあります。
特に処置別にその都度払う料金形態の場合は、最終的な総額がわかりづらいデメリットがあります。クリニックによっては、トータルフィー制で追加料金が発生しない場合もあるため、自分に合ったクリニックを選ぶ必要があります。
大人が歯列矯正せずに放置するとどうなる？
悪い歯並びは噛み合わせが合っていないケースが多く、不正咬合は身体の健康を害する原因になり得ます。虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、将来的には入れ歯が必要になったり、歯を失ったりする可能性が高くなります。
歯列矯正というと、見た目の改善が目的だと思われがちですが、実際には噛み合わせを整えることが主な目的といえます。いくつになっても健康な歯を維持するために、早い段階での歯列矯正がおすすめです。
大人が歯列矯正するメリット
歯列矯正は審美的なメリットだけでなく、精神面・健康面にもさまざまなメリットが期待でき、生活の質を高めることにもつながります。
主に次のようなメリットが挙げられます。
コンプレックスの改善
長年悩んでいた口元のコンプレックスが解消されることで、精神的なストレスから解放されます。人の視線を気にすることがなくなり、自信が高まるきっかけにもなるでしょう。
また、口元の清潔感が向上することで、特に接客業や営業などの対面での仕事において、好印象を与えやすくなります。
噛み合わせの改善
歯列矯正によって正しい噛み合わせになると、顎や周辺の筋肉の緊張が和らぎ、顎関節症の症状が軽減したり、咀嚼時の不快感が解消されたりすることがあります。
例えば、不正咬合の場合、顎や筋肉に負担が集中し、頭痛や肩こりを引き起こすこともあります。噛み合わせを改善することで、機能面だけでなく、全身の健康状態が向上する可能性があります。
滑舌や発音の改善
歯並びが原因で生じる発音の不明瞭さや、滑舌の悪さが改善されることがあります。特に、すきっ歯や出っ歯の方の場合、サ行やタ行の発音が難しくなることがあります。
歯列矯正によって発音がクリアになることで、コミュニケーションのストレスが軽減されるのも大きなメリットです。
口腔内の健康改善
歯が重なり合ったガタガタの歯並びは、食べかすや汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
しかし歯列矯正で歯並びが改善されると、歯磨きやフロスのケアがしやすくなり、磨き残しも少なくなります。しっかりケアできるようになることで、虫歯や歯周病のリスク軽減はもちろん、口臭予防にもつながるでしょう。
加齢による歯のトラブル予防
噛み合わせが悪いと、将来歯を失うリスクが高くなるとされています。さらに加齢にともなって、歯茎の後退や歯の損傷などのトラブルも増加するといいます。歯を失うと食べ物がよく咀嚼できず、栄養素の摂取不足に陥る可能性もあります。
早い段階で歯列矯正をしておくことで、歯を失うリスクや入れ歯が必要になる可能性が減り、将来の歯のトラブル予防にもつながるでしょう。
大人の歯列矯正で失敗を防ぐポイント
歯列矯正には大人ならではのリスクがありますが、事前に防げる場合もあります。よくある失敗を防ぐためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
歯のメンテナンスを欠かさない
歯列矯正では、虫歯や歯周病が進行するリスクがありますが、これは毎日歯磨きやフロスを徹底すれば防げるものです。矯正中は、いつも以上のケアをこころがけましょう。また、健康的な歯であれば歯根吸収（しこんきゅうしゅう）や歯肉退縮（しにくたいしょく）などのリスクも生じにくいといえます。
なお、歯列矯正のなかでも取り外しができるマウスピース矯正であれば、お手入れが簡単で、口腔内トラブルも起こりにくいでしょう。
クリニックは慎重に選ぶ
歯列矯正の治療期間は長期におよび、決して安くない費用がかかります。失敗しないためにも、信頼でき、実績のあるクリニックを選ぶことが重要です。
Webサイトなどで実績を公開していたり、インターネットで口コミなどを確認できたりします。それだけでなく、実際にカウンセリングを受けて、相性が合うかどうかも確認してみましょう。
例えば湘南美容歯科では、累計治療実績が16,506件※と多くの治療実績があります。培われた経験と知識をもとに、最適な治療をご提供いたします。（※2019年～2024年12月末までの累計マウスピース矯正症例数）
湘南美容歯科の歯列矯正についてはこちら ＞
自分に合った治療を選択する
歯列矯正といっても、ワイヤー矯正・マウスピース矯正・セラミック矯正など、さまざまな治療方法が存在します。治療期間や費用、対応できる範囲など、それぞれ異なります。「何を重視するのか」によっても、適切な治療は変わってくるため、自分に合った治療を選択することが重要です。
しっかり比較検討することで「治療が長くなった」「費用が予想以上にかかった」などの失敗を防げることもあります。
定期的に通院することが重要
歯列矯正では、4〜8週間ごとに経過観察が必要になります。歯の動き具合や歯にトラブルがないか、治療計画どおりに進んでいるかは、実際に口の中を確認しなければわかりません。
「治療期間が延びてしまった」「計画どおりに矯正ができなかった」といった失敗を防ぎ、しっかり効果を出すためにも、定期的に通院することが重要です。
まとめ
大人の歯列矯正が「やめたほうがいい」と言われるのは、大人特有の口腔内トラブルがあるためです。しかし、口腔ケアを徹底することで、多くのリスクは未然に防げるといえるでしょう。むしろ大人の歯列矯正は、審美面・精神面・健康面でさまざまなメリットが期待でき、生活の質を高めることにつながります。
湘南美容歯科では、「マウスピース矯正」と「セラミック矯正」を取り扱っています。カウンセリングや口腔内の検査をもとに、患者さま一人ひとりに最適な治療をご提案いたします。歯列矯正を検討している方は、豊富な実績を持つ当院へぜひご相談ください。
※本記事の内容は公開時点の情報であり、実際のメニュー名や金額とは異なる場合がございます。最新の情報については当院までお問い合わせください。
